DECOPICが出来るまでとpivotの話。
年末なので振り返り。
どうしてできたの?と聞かれることが多かった年の瀬なので、一度まとめたいな、と思います。
ちょっと長いです!
■2011年1月〜3月「tequila」
当時はソーシャルゲームと診断系ソーシャルアプリを中心に事業展開をしていたんですが、
世の動向を見てて2011年中に事業の50%程度をスマホにしよう、と考えました。
大好きなのはコミュニケーションサービスなので、その軸で考えることに。
pivot前のpathが面白いなーと思っていて、社内外の少人数で使っていて見事にハマる。
しばらく「pathみたいなサービスが作りたい!」って言いまくってました。
もう一つ熱いな、と思っていたのがbelugaで、そこからどこまでソーシャルグラフを握るか、
SNSとの距離感をどう考えるか、ユーザーを惹きつける最大のポイントはどこなのか、
というあたりで延々悩む時期が続きました。
うちは毎週mixiさんとMTGをしているんですが当時ご担当いただいていたKさんとの
ディスカッションでの気づきが本当に大きかった。
コミュニケーションの深さと広さの相関関係や、ユーザーのインタラクションを最大化させる点に企画をフォーカスする、
という最近ドヤ顔で僕が言ってる企画の骨子はだいたいKさんとの議論を続けていた数カ月間で教わったことです。
その中でSNS上でソーシャルグラフをごっそり取るbelugaモデルより
path的な少人数でコミュニケーションして気持ちいいサービスが
最終的に勝つんじゃないか、と考えてそちらに集中することにしました。
もう一つKさんと話してて面白かったのが、
Kさんがおもちゃショーに行ったときに人の脳波を測定するおもちゃを試した話。
意識を集中する=そういう脳波が出るとロケットが飛ぶ、というおもちゃらしいんですが、
まず黒い点を目の前に出されて「これに集中してください」と言われると、すごく時間がかかる。
でも、次に女性の写真を目の前に出されると、「集中して」って言われなくてもロケットが飛ぶw
それだけ人間って、「人の顔」への執着というか意識が強いんだよね、という話。
ここから、「どうやったら顔写真を撮るか」を意識してサービス設計をするようになりました。
ランチの写真じゃ面白くない。
pathで毎日遊びながら写真共有やグループメッセージング系のアプリをひたすら試す中で、
「友達の写真に落書きできたら面白いんじゃないか?」とアイデアが出る。
従来の「写真やテキスト投稿→時系列でコメント」モデルじゃなくて
「写真投稿→その上に友達がらくがき」というニコ動や黒板.in、らくがきライブみたいなモデル。
写真の下に動画再生みたいなスライドがついてて、
ずらすと擬似リアルタイムにどんどん写真が落書きされていく感じ。
従来型の掲示板モデルよりずっと中毒性があって内輪ネタになるんじゃないか!と盛り上がる。
「落書きコメント」の機能は企画を進める中でボツになってしまったんですが、ここから派生して、
リサーチするとプリクラ系のアプリって沢山すでにある。しかもどれも一定の成功しているのでアリだな、と。
このあたりでプロジェクトのコードネームを決めよう、という話になり、Androidがお菓子ならばウチは酒だ!
ということで、コードネーム「tequila」。
3月になる頃には弊社の mixiアプリもスマホユーザーが驚異的に伸びてきていて、
「年内に50%」じゃなくて一刻も早く事業ドメインをスマホに移行しよう、という空気感になっていました。
その後、Path的な少人数コミュニケーション+お絵かき出来る写真共有サービス、
というコンセプトでどんどん企画を詰めていきました。
今思うとユーザーターゲットや利用シチュエーションがボケていて、
path的なPUTH型のソーシャルグラフ生成があり、
さらにグループメッセージング的な要素があるわ、GPSでのチェックイン機能はあるわ、
ミニゲームもいれちゃう!?とてんこ盛り。
当然、当初3月に開発スタートして5月にローンチする予定が大幅にずれ込むことになりました。
■2011年3月「kahlua」
tequilaの大まかな骨子が出来て、開発を進める中で
「tequilaをギャル向けにしたら当たるんじゃ!?」というアイデアが出ました。
女子向けスマホアプリが全然無いことと、Instagramの「クールな写真=エラい」みたいなコミュニティを
プリクラ的に表現したら盛り上がるんじゃないかな、と。
マーケティング的に女子特化でやるべきなので別アプリに。コードネームも女の子向けなので「kahlua」としました。
感覚として「絶対当たる!」と思ったんですが
「ソーシャルグラフを握ってpath型のクローズドコミュニケーションで世の中を獲るんだ!」
と息巻いていた僕にとって、
市場が半分になる女子向け特化のサービスを事業の中心にすることは考えられなかった。
tequilaが出来たらそのエンジンを使って作りましょう、という話になり一旦Pendingになりました。
■2011年8月「Mixsnap」
仕様がどんどん変わったり、対応プラットフォームの変更などもあり、
5月末ローンチの予定が大幅に開発が遅れたtequilaも、ようやく8月頭にリリースへ。
商標引っかからない名前をひたすらさがして「Mixsnap」という名前になりました。
途中Snapeeeさんの躍進があったりして、
「あー、これからずっとパクリって言われるんだろうな、、」と憂鬱になって、
開発の遅れにカリカリしたりしてました。
今思えば開発メンバーに申し訳ない・・・。
工数の都合上、グループ共有的な機能やチェックインの機能などをどんどん削り、
正直ちょっと不本意な出来でした。
でも半年もプロジェクト進めてるとメンバーも体力的に限界だし、一度出さないと・・・。と。
いろいろな会社から写真系アプリが毎週のようにリリースされてて焦りもかなりありました。
ドリコムさんの「Pasha!」とかは結構好きなサービスで「やられた!」って思ったり。
■2011年8月 Pivot!!!
8月に出したMixsnapは、残念ながらあまりヒットしませんでした。
しかし、投稿された写真をみて興味深いことがわかりました。
投稿写真の80%位に人の顔が写ってる。
mixi向けっていういい感じのクローズドさとデコる感覚が、たぶん絶妙に合わさったんでしょう。
ユーザー獲得としては失敗でしたが、サービスの使われ方としては成功でした。
そこからサービス導線を全部見直すことと、インタラクションを最大化させるためにどうしたらいいか、
という議論を2週間位続けていました。
「どうして写真を投稿したいのか」
「SNSのタイムライン上で友達にどう見えるのか」
「どんな反応をもらったら嬉しいのか」
そういった議論をひたすらする。
元々「ソーシャルグラフを握りたい!」や「新しいコミュニケーション手段で世界を獲る!」みたいな
ギラギラしたものが企画に入っていたのが、一度失敗したことでユーザー目線に立てた気がします。
「タイムラインはSNS上で見れば良くない?」→タイムライン機能カット。
「写真投稿したいのに会員登録面倒だよね?」→会員登録機能カット。
とどんどん「写真を撮る」以外に必要な機能は削っていきました。
その議論の過程で「だったらデコに特化したカメラでいいじゃん!」となって
DECOPICに至ったわけです。
(その意思決定の瞬間をはっきり覚えて無いのが残念なのですが・・・)
■2011年9月「DECOPIC for mixi」
9月にAndroid/mixiアプリとして先行して出したときに、面白いことがありました。
日本語のみ、mixiユーザーじゃないと使えないアプリなのにダウンロードの80%が海外からだったのです。
当然レビューは「使えない!」という英語や中国語のコメントが続き、慌てて日本のみのDLに変更しました。
中国で事業をやっていた経験もあるので、元々「カワイイ系」はアジアで強い、
という実感はあったのですが、これで「絶対流行る」と確信に至りました。
その後Sina weiboやrennrenへの対応、紹介動画に中国語字幕を入れたり、
紹介サイトを5ヶ国語対応にしたり、と、
社内でも「ちょっと極端なんじゃ?」という空気が若干あったんですがKYに多言語化を進めました。
どれだけ効果があったのかは正直わからないですが、やりきってよかったなー、と思います。
■2011年10月「DECOPIC」リリース
リリース後についてはプレスリリースやTwtterで割と細かくご報告しているので展開は割愛しますが、
まずはユーザーのご支持を頂いて、ホッとしている、というのが正直な気持ちです。
DECOPICをリリースする直前に、「Photo glitter」というプリクラ系カメラアプリが出て、
あっという間にリリース後2週間で50万ダウンロードを達成しました。
これが結構プレッシャーで、「絶対2週間で50万を達成してやる!」という思いと
「すでに市場は取られちゃったんじゃ・・・」という不安などもあったので。
この1年Mixsnapから始まってずっと写真アプリ作り続けていて、
コミュニケーションプラットフォームを作るのが夢なのにそれを抑えて「カワイイ系」に特化して、、
夏には会社のソーシャルゲーム事業を撤退するという意思決定をしたので社員にも迷惑を掛けて、、、、と
そんな中リリースしたので、自分の気持ち的には背水の陣でした。
コレ外すと立つ瀬がないなぁ、と。
なので2週間で50万DL達成したときに、やっと最低限ノルマを達成したような、
少し落ち着いた気持ちになりました。
それまで夢の中までAppstoreが出てきて、あんまり寝られなかったし。
■Pivotしてみて。DECOPIC出してみて。
3月のタイミングでなんで「kahlua」の開発しなかったんだろう、とか
いろーんなジャッジのミスや反省点はあるんですが、やってみたから得られたことがすごく大きいです。
Mixsnapやmixi版DECOPICがあったからこそ、今のDECOPICがある。
なので、コンセプトを絞ってなるべく小さなサービスを、とにかく早くやることが大事なんだと思います。
で、ダメだと思ったら即変える。この「ダメかも」って感じる勘を養うってだけでも、
何度かサービスだして失敗するって経験は無駄じゃないと思います。
あとはPivotとはいっても、軸がないとただ漂流してるだけなので、
サービスの軸を早く見つけて、徹底的に議論するのが大事。
今回のプロジェクトの場合は「ユーザーのインタラクション」を最大化するためのサービス、という視点が常にあって、
議論を続けられたことは大きな収穫でした。 この知見はちょっとやそっとで追いつかれない自信があります。
・コンセプトを絞り込んで、サービス規模をふくらませすぎないこと。
・失敗を恐れず高サイクルでサービスリリース、修正をすること
・Pivotする中でもサービスの軸をぶらさず、ノウハウが極力無駄にならないように気をつけること
の3点を、自分の教訓としてシェアしたいな、と思います。
あとは当然、好きなことじゃないと続かないので、好きなことを軸にしましょう。
■DECOPICとCFの今後
現在のDECOPICは、この1年間で学んだこと、得られたことの集大成なのですが、
やれることはもっともっとあります。
もともとやりたかったことを削って削って作ったりもしたので、これからまた
本来の理想のコミュニケーションツールに近づけていきたいですし、
「みんなでケンテイ」で得たSNS上でのバイラルのノウハウや、
ソーシャルゲームで学んだゲーミフィケーション
の考え方など、他のスマホの会社さんとはちょっと違う、
弊社の強みも来年は発揮できるのでは、と思っています。
目指すは1000万DL!毎日200万人位が使うサービスに早く持って行きたいです。
2012年も、DECOPICとコミュニティファクトリーをよろしくお願いします!